ソ連やその後のロシアという国の特徴は、中国や北朝鮮と違い、過去の残虐な独裁政権や、その失敗をわりと早い段階で公開してしまう(されてしまう)という点です。
1924年に、前任のレーニンの反対を黙殺してソビエト共産党書記長(ソ連のトップです)になったスターリンは、数百万人とも、数千万人とも言われる大粛清をします。
・スターリンに反対する奴は強制収容所にぶちこんで死刑
・スターリンに反対してるという噂が立った奴は強制収容所にぶちこんで死刑
・スターリンに反対しそうだと、スターリンが思った奴は強制収容所にぶちこんで死刑
・ナチスドイツが「あいつ、スターリンに反対らしいですよ」というデマを真に受けて、軍のエース級将校を強制収容所にぶちこんで死刑(これによりソ連軍はナチスドイツ軍に大苦戦)
・金持ってる資本家も共産主義に反対しそうだし、全員死刑
・あとは疑わしければ死刑
これは第二次大戦の終戦後も続き、スターリンが亡くなる1953年まで続きます。
すると、これらのスターリンの暴挙を後のソ連トップになるフルチショフが暴露、東側諸国からのソ連不信を招きます。
その後もゴルバチョフのペレストロイカや、ソ連崩壊時の元KGB諜報員などが、過去のソ連のやった悪事をドンドン暴露。
結果、ソ連のエグさは、西側諸国はもちろん、ロシア人の間でもブラックジョークのネタになって行きました。
そんな流れで、どこまでが独裁政治の歴史の反省なのか、どこまでがネタなのか、どこまでがあくまで資本主義国として真面目に商売をしているだけなのかがいまいちわからない、モスクワの強制収容所博物館というのが去年建ったとのことで、早速行ってきました。
モスクワの観光地は早いところは8時から、遅いところでも10時とかからはやっているので、10時頃に到着すると、11時オープンとのこと。
博物館向かいの公園で時間をつぶします。
建物は、当時の強制収容所のイメージで作られているそうです。
まだ新しいので、入口を見ると綺麗になっているのと、あと、看板とかがおしゃれになっています。
中に入ると荷物を入れるロッカー、カフェ、チケット売場、小さなミュージアムショップがあります。
全て、強制収容所をコンセプトにしているので薄暗いのですが、外の自然光をうまく取り入れたり、間接照明を使ったり、不気味にならないようにしつつ雰囲気を出しています。
シックな色のシンプルな家具、アンティーク調の金属の内装などを使っていて、いちいちオシャレです。
これ、建築デザイナーも、かなりのレベルの人に(お金かけて)依頼していると思います。
ここまで行くと、ネタではなく(ましてや当然過去の歴史の反省でもなく)、観光スポットとして結構頑張って仕込もうとしているのではと感じてきました。
受付で1人350ルーブル支払って、入場です。
中に入ると、展示があります。
過去、ロシア全土にあった強制収容所から集めた扉。
こんな風に芸術作品のようにモチーフみたいに組み立てる必要があるのか。。
壁面には、収容所のレイアウト。
デザインとして、ばっちり決まってます。
強制収容所ごとの独房の面積が紹介されています。
これもフロアの内装デザインとしてちゃんとハマっちゃってるじゃないか。
ポスター、新聞記事。
この手のおどろおどろしい絵のポスターや絵葉書、マグネットはロシアの土産物屋や書店でもたまに売ってますが、ソ連という国のやってることが恐ろしすぎて、ソ連政府が発行したというだけで、ポスターの絵があまり恐く見えません。
現実に比べるとだいぶかわいい絵だな、みたいな。。。
強制収容所に残されていた、受刑者の遺留品の展示。
だからなんでここまでオシャレな間接照明なんだ。。
ぜんぜん感情移入できないじゃないか。。
床には恐らく、粛清の歴史。
奥まで長々続きます。
粛清、多すぎるんだけど、スターリン、エグすぎるんだけど、、、これもデザイナー住宅のモデルハウスみたいでオシャレすぎて入ってこない。。。
奥には、全ロシア強制収容所マップ。
収容所別、処刑人数グラフ。
普通に1収容所で10万人とか20万人とかあります。
収容所に入った人か、その家族かわからないけど、インタビュー映像。
おばあちゃんの怒り、伝わります。
隣では、当時の時代背景の解説映像。
何かの地図が絵合せパズルになっています。
これは、ロシア語がわからないと楽しめないかも。
(ロシア語がわかっても、歴史も併せてわかってる人はそれはそれで楽しめないかも。)
何年に、何人が処刑されたかを示した、デザイン性の高い白木のグラフ。
見開きの左ページに説明文があり、右ページは空白になった冊子があります。
冊子をめくると、左ページに紹介文がある人のインタビュー動画が右ページに映し出されます。
こんな技術見たことないし、何のために作られた技術なのかもわからないし、なぜここに使われたのかもわからない。。。
金儲け目的の博物館なのではなく、シュールなネタなのかという気がしてきます。
180度で当時の時代背景を解説した映像が観れるスペース。
だから、180度じゃなくて全然いいけども。。
一応、パノラマで写真撮ってみたけど、これであ何がなんだか。
最後の部屋は、フルチショフによる強制収容所からの解放の演説と、その当時入所していた人がフルチショフのお陰で自由になれた、と話すインタビュー映像。
ここは世界史上でも大事なポイントです。
最後の最後だけは大事な歴史学習がまともにできるスペースです。
全体を通じて英語の説明はまばらでした。
結局、ロシア語があまりわからないこともあって、何狙いの博物館なのかイマイチ分かりかねましたが、建物自体はデザイン的にかなりよくて、それだけでも楽しめると思います。
そして、ちょっと思いました。
ネタなのか、歴史の反省なのかわからないけど、オシャレな分には問題ないのではないかと。
オシャレにすることで「戦争賛美か!」というクレームを恐れてしまいがちなのかもしれないけど、やっぱりオシャレな方がいい思い出にはなるし、口コミが広がって来る人が増えた方が、いずれの目的にも合うと思う。
同じ悲劇の歴史を語る日本の知覧特攻博物館とかと比べると、オシャレすぎて確かに感情移入しにくかったけど、こんな博物館が増えればそれも気にならなくなると思うし、別に受刑者の気持ちにならないと歴史が理解できないわけでもないので、だったら観光地なんだからダサいよりオシャレなほうがいいと思う。
悲劇の歴史の博物館が、やたらオシャレ、これは少なくとも新しいと思います。
最近、スターリン万歳思想で有名なプーチン大統領が、ロシア中にある、戦争の失敗を紹介する博物館や、独裁者を悪く紹介する博物館を潰しにかかっているというニュースもあります。
なので、こちらのモスクワのデザインクオリティが高すぎる強制収容所博物館、見に行くなら早めがオススメです。
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