私が大学受験をしたのは2001年1月のセンター試験からでした。
21世紀に入ったところで、私が中学校に入った時には偏差値は学校では使われなくなっていましたが、ゆとり教育はまだ始まっておらず、どちらかと言うとだいぶ詰め込み式の教育でした。
私は法学部を受験していたので、主な受験科目は英語、国語、そして社会科科目。
当時、社会科科目は大学が個別に設定する二次試験では、世界史、日本史のいずれかを選ぶのが基本で、大学によってはこれに加えて地理、さらにセンター試験ではこの他に政治経済と倫理も選べるよ、と。
この世界史、日本史、地理、政治経済、倫理の5つを全て受験勉強する人はいませんので、どれかを選ぶことになります。
この社会科科目の選択について、高校(超進学校でしたので、大学受験の情報は相当集まっている、と言われていました)や予備校の先生の当時のアドバイスを総合すると、以下のような感じでした。
・地理は100%暗記だよ。
・世界史もほとんど暗記だよ。
・日本史も世界史ほどじゃないけど、結局、暗記の占める比率が高いよ。
・政治経済と倫理も暗記だけど、ボリュームは少ないよ。
・つまり、2次試験で社会科科目がある大学を受けるなら、世界史か日本史か地理。
・センター試験しか受けないなら政治経済か、倫理。特に倫理は暗記が少ないのでオススメ。
・いずれにしても、暗記だよ。
という感じ。
そして、ここが一番問題(一方、当時の私にとっては一番役に立った情報)なのですが、必要な知識の量(つまり、暗記の量)は、
・世界史 6
・日本史 5
・地理 3
・政治経済 2
・倫理 1
だよ、と。
私が受けようとしていた大学は二次試験でも世界史か日本史のテストがあったので、結局日本史を選んだのですが、この話を聞いて思いました。
「世界史を選択する奴、アホだな。」
と。
日本史は暗記だけじゃなくて、流れの理解度も少しは(世界史よりは)問われるので、暗記疲れせずに勉強やりきれるから、継続しやすいというメリットがある。
地理は100%暗記だとして、世界史の半分。
センター試験しか受けないなら、ニュースが好きなら政治経済か、そうでなければ倫理か。
世界史はないだろうと。
当時は小学校でも中学校でも世界史の授業はなかったので、高校に入った瞬間から世界史から逃げ続けて、30代になる今まで、世界史の知識はほとんど身につけずに生きてきました。
ところが、海外旅行に行く際に、世界史の知識がないとかなり観光の楽しめる度が減ってきます。
世界史の知識と言わないまでも、歴史遺産や博物館の展示物などを見た際に、当時の、その国の、その人たちの置かれた環境を、なんとなくわかっているだけでも、観光で見る楽しみが増えます。
当時の、その国の、その人たちがなぜそのような物を残したのか、なぜそのような行動をとったのかを、なんとなくわかっているだけでも、観光で話を聞いた時に感じる感想の深さが深くなります。
しかし、今さら、世界史の勉強は・・・、正直しんどい。
だって、何を聞かれても(大学受験レベルでですが)答えられるようになろうと思ったら、倫理の6倍、政治経済の3倍の量です。
しかも、高校時代に教わった「世界史なんて学ぶ奴は、ただの非合理的な奴」という、先入観もありました。
そんな中、見つけたのがこの本です。
この本の著者の角田陽一郎氏はテレビ局の、主にバラエティ番組のプロデューサーだそうです。
世界史とは何か、という序章から始まって、序章のオチは、
「世界史はバラエティだ」
というコンセプト。
年号なし、暗記なし、学術的表現なし、1冊読んだら主要なできごとがわかる上に、何より楽しいのが、流れがわかる。
また、私は、歴史を学ぶことの最大の意味は、「歴史は繰り返すから、歴史を学ぶことで、未来が予想できる。」という点だと思います。
そして、「歴史は繰り返すから、歴史上失敗したやり方は、未来でも失敗する可能性が高いので、失敗しないやり方を考えることができる。」という点だと思います。
その点、この本では、
「革命をした際に理想を突き詰めすぎると、スピードが遅くなって失敗する。」とか、
「資源がない国は、資源がある国を侵略しようとする。」とか、
「宗教のような思い込みが、人を殺したり、弾圧したりする。」とか、のように過去に何度も繰り返しで起こった、似たような現象を解説し、その上で
「何年に誰がどこを侵略した。その理由は・・・。」
のように解説されているので、すごく少ないページ数で、世界史で起こった数々のできごとを理解できるようになっています。
アフリカ、アメリカ、日本など近世以前の脇役、この本で言う「周縁」の国については、バラバラとした解説になっている箇所もありますが、ヨーロッパの歴史については、紀元前から冷戦まで、流れで理解できるので、かなりわかりやすかったです。
「勉強芸人」として評判のオリエンタルラジオの中田さんが帯で、情報のまとまり具合を絶賛していますが、まさにそうだと思います。
今、世界史を学ぶ際に求められているのは、内容が正確なこと、内容が充実していること、内容が詳しいこと・・・ではなくて、それよりも、
「短くて、流れと見どころがわかりやすい」
ことだと思うのです。
これ、思うのですが、高校などで初めて世界史を教える際には、学校の先生の独断で、高校1年生の4月の1週目にこの本を最初に渡し、読書感想文か要約をまとめさせてから世界史の教科書に入った方がよいと思うのです。
もちろん、日本の教科書は「間違ったことを言ってはいけない」という徹底したポリシーのもとに作られているので、「立証されていない話を書いてはいけない」というルールに則って作られています。
なので、これに沿った授業を行おうと思えば、「立証されてはいない」ことを書かれている可能性がある、角田陽一郎氏のこの著書は授業で使うことはできないのかもしれません。
でも、先生の独断で出す宿題として、あるいは自習課題としてこれを生徒に読んでもらってから授業に入ると、世界史の授業は全然楽しくなると思うのです。
そして、世界史の理解が深まるということは、海外旅行の楽しさが飛躍的に上がるということです。
今さら感じるのですが、世界史を知らずに海外旅行に行くって、仏教伝来も、平安時代も、幕末も知らずに京都に行くようなもんです。
いや、そりゃ祇園に行ったり、映画村見たり、水族館行ったりして楽しいかもしれませんが・・・。
温泉だけ入りに行く温泉旅行とか、買い物と焼き肉だけが目的のソウル旅行とかならまだしも、散歩するなら、歴史を知らないと、本当に浅い観光で終わってしまう。
でも、分厚い歴史本を勉強するのも正直、しんどい。
時間があっても、ほとんどの歴史書は学術的表現が多すぎて読み疲れるし、予備知識がないので、理解しようと思うといちいち調べながら読まないといけない。
なので、この本のこの簡単さはよかったです。
子供が勉強を嫌いになる理由の一つに、「教科書がつまらない」というのがあると思います。
私、期末テストとか、受験とか、いわゆる学校の勉強はかなり得意なほうでした。
いわゆる勉強ができるほうでした。
なぜできたか。
つまらない教科書を読むのではなくて、当時「赤ペン先生」で一世を風靡していた、進研ゼミのマンガ付きの冊子のほうを読んでいたからです。
ベネッセという民間企業が作る進研ゼミは、子供に継続してもらわないと収益が伸びないので、継続しやすいように、とにかくわかりやすく、とにかくカンタンな言葉で作られていました。
更に、テストで100点を取ると、赤ペン先生がほめてくれるという楽しみもありました。
私はなぜか暗記も得意でしたが、暗記が苦手なこどもであれば、遊ぶ時間を惜しんで、つまらない教科書を読んで、暗記というつまらない行動をとらないと行けない、さらに暗記できてもほめてくれないわ、テスト悪いと怒られるわ。
こんなんで勉強が好きになる方がおかしいと思うのです。
わかりやすい本で勉強する、暗記ではなくて流れを楽しく理解する、この2つで子供の勉強嫌いは少しでもなくなると思うのです。
そして、カンタンな流れだけでも把握しておけば、それから学ぶ高校の世界史も楽しいし、何より一生の中でほとんどの人は何度も行くであろう旅行が楽しくなります。
その意味でも、この本はオススメだと思います。