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神谷奏六の日記

過労リーマン→リタイヤニート生活→現在、週4時間だけ働く生活中。神谷奏六(かみやそうろく)の日記です。

オススメ本 悩みどころと逃げどころ(ちきりん・梅原大吾 著)

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オススメ本 悩みどころと逃げどころ(ちきりん・梅原大吾 著)

最近読んだ中でピカイチの本です。
こんなに新しい考え方の提示や、気づきが多いと思った本はここ久しくない、と思ったのが「悩みどころと逃げどころ(小学館新書)」です。





カリスマブロガー・ちきりん氏と、格闘ゲーム界の神・梅原大吾氏の対談著書で、立場や、価値観や、意見がかなり異なる人同士の対談という点が見どころです。

よかった点を書きます。

「学校で教わること」と「人生を幸せにして行く」という点について読むのにとてもオススメです。



1.対談する過程で話の中身が深まっていっている

私は対談の著書はこれまでも色々読んで来ましたが、対談書というのは

・知っていることをお互い述べ合っている(だけ)
・お互いの意見を述べ合っている(だけ)
・お互いで賛成と反対をそれぞれ述べ合っている(だけ)
・お互いの共通の意見に共感し合っている(だけ)

という本が多いように思います。


いや、だったらそれぞれで自身の情報や主張をまとめた本を書いて、読者はそれぞれを読んだらいいじゃないか。

何も途中で相手の話の腰を折ったり、「なるほど、それは新しい考え方ですね。」のような不要なチャチャ入れなくても。

著者がちゃんと両論併記している本さえ読んでいれば、あるテーマについて読み手の中で議論を深めることはできるわけだし。



その点、この本は、両者が話し合い、意見を出し合う過程で、共通点や相違点を明確にしながら話を進めています。

なので、例えば、当初は学歴エリートのちきりん氏が「大学なんて行く意味あるの?」、学歴のない梅原氏が「大学に行った方がいい」と意見が異なる描写が続きます。

それぞれ大学に行った方がいい理由は、例えば「学歴を得られることで学歴を重視する人とちゃんと話ができる」、行かない方がいい理由は、例えば「無思考である人間に育ちやすい」と、理由を述べています。

それぞれ筋が通っていて説得力があるのですが、よくある対談書であれば、これで終わりだと思います。

ところが、この本では、ここから「教育内容に意味があるかないか」「卒業証書に意味があるかないか」というような感じの、まあよくあるありきたりの議論とは別のアプローチを試みます。

「大学に行った方がいい」と考える人は、どのような立場に置かれており、その苦労が(特に一流)大学を出た人がいかに気づけないかという点に踏み込みます。

そして、「大学に行く意味がない」と考えて大学に行かない場合、「人間の尊厳を踏みにじられるような経験をすることがある」、「頭勝負ややる気勝負の世界よりはるかに厳しい、能力勝負の世界に身を投じる必要が出てくる」というように、「大学に行った方がいい理由」が深まって行きます。

教育内容の是非、卒業証書の要不要ではなく、尊厳や、そもそもどう人生で勝負をするか、に及ぶのです。


これだけ読みやすい文体で、ここまで話が深まる本というのはなかなかないと思います。



このような議論はこの他にも何カ所かあります。

梅原氏が「勝った負けたの結果より、プロセスが大事」という意見を出したのに対し、ちきりん氏が「プロセスより、結果が大事」とそれぞれ異なる意見を出し合います。

ここから、梅原氏は格闘ゲームの大会での経験をもとに「大会に至るまでのプロセスや、勝つまでのプロセスからファンに感動させるものが生まれることがある」、ちきりん氏は「ビジネスの世界で、プロセスを工夫しても結果が出なくて評価がされていないことばかり」のように双方の意見を述べます。

そして、ここで終わらず、「簡単なゲームキャラで勝っても盛り上がりもなければ、ゲーセンで認められることもない」「いや、ボサボサの頭で会社に出勤して徹夜でがんばったアピールをしても、資料の中身が悪ければ評価されない」のような具体例を挙げながら、議論が深まります。

そして、

「プロセスを重視することで『尊敬される』『ファンがつく』『業界が活性化し、もっと自分たちのレベルが上がる』という、より大きな結果が生まれる」

「格闘ゲームでもビジネスでも、だまし打ちをしたら個人戦・短期戦では勝てるかもしれないが、プロセス(やり方)を教え合って皆でレベルアップしたほうが団体戦(日本対世界など)・長期戦で勝てる」

「ただし、勝ったという成果を出したことで、その考え方を言葉にする権利が生まれる」

のような、よくある「結果とプロセス」の口論しかない対談本ではたどり着かない本質的なところまで、理解しやすく学べるようになっています。



ちきりん氏が「逃げまくった方がいい」と、梅原氏が「逃げたらダメでしょ」と意見を出したら、その後の議論の中で

「逃げるのも大事、逃げないのも大事。逃げるのか逃げないのかを自分で問うのも大事。」

「逃げないのを応援する父親的優しさにも価値があり、逃げるのを応援する母親的優しさにも価値がある」

「ちきりん氏の言う『逃げる』にも、梅原氏の言う『逃げない』にも自分がどこのフィールドで戦うのかを決めるのが大事という点で共通していて、その決める過程でもがいてあがいてするのも大事、という点では共通している。」

という本質的なところに議論が行き着いています。






2.改善案が豊富、かつ深い

この本の当初の趣旨であり、全体を通じて議論の主題になっているのは、「学校教育」についてです。

この手のテーマは、

「今の学校教育はあれが悪い、これが悪い」
「今の学校教育はあれが意味ない、これが意味ない」
「今の学校教育はあいつが悪い、こいつ悪い」

下手したら、

「昔はよかった。昔に戻そう。」

しかないような書籍は多くあります。


その点、この本は、今の学校教育の問題点をいくつか簡単に示した上で、その改善案が豊富に盛り込まれています。


例えば、「勉強や係の活動をやる理由について質問した時に、頭ごなしに『いいからやれ』しか言われないので、社会で必要な考える力もつかなければ、疑問を持つ力もつかない、自分で結論を出す力もつかない」という問題点を挙げています。

それに対して、例えば音楽の授業では、音楽が人に与える力を体感させたり、算数の授業では、算数がゲームや麻雀で勝つことにつながることを教えたり、英語の授業では、英語が海外の格闘ゲームの大会で活躍することを伝えたり、そうしたほうがよい、という意見がたくさん出てきます。


また、「全員で同じ授業を学ぶ時間が長過ぎるので、できる人にもつまらないし、できない人にもつまらない」という問題点も挙げています。

それに対して、「科目を選ばせた方が、なりたい職業がはっきりしている人は集中できるのでよいし、なりたい職業がはっきりしていない人は(ほとんどの人が経験する)職業を何度も選ぶという、もがいてあがいて選択する経験を早くからたくさん積めるのでよい」というように改善案がたくさんでてきます。



さらに、この話はその後の議論の深まりの中で「自分で結論を出すこと」や、「何度も選んで、もがいてあがいて選択すること」こそが、「自分の人生を幸せにする」という結論にまでつながっていきます。

この、「学校教育」という1テーマの中の、小さな問題について、問題点を指摘するだけで終わらずに数々の改善案が出されています。

そして、その改善案が(普通あまり議論されない、あるいは議論を詰めきれない)問題に対してどれだけ大きな効果を出すのかを述べること、という点で、前向きに、しかも深く学べるようになっています。





3.「学校教育」と「自分の人生を幸せにする」について、結論がある

よくある対談本だと、対談している人どうしの意見が異なったときに、その結論として

「色々な見方がありますね。」
「どちらを選ぶかは、その人しだいかもしれませんね。」
「どちらを選ぶかを真剣に考えるべき時が来ていますね。」

みたいな結論で終わってるだけの対談本は多いです。


「人によって見方が違うのだからそれぞれは尊重したほうがよい」とか、
「人により、正しい選択は変わる」とか、
「選択を迫られるとき、それは大事なときである」とか、いや確かにそういう考え方は大事だと思います。

この本でもその点は再三、述べられています。

ただ、それで終わったら、ただ「対峙して、談話している」だけの「対談」でしかないように思います。

せっかく立場や意見が異なる人が、それも(出版社が声をかけるくらいの)ある程度、その人の話が世の中で評価されるだろう人どうしが議論をしているのだから、議論を重ねた上での何かの結論というか、結論でなくても一つの新しい、あるいは深い考え方に到達したものを見てみたいものです。


その点、この本については、二人の異なる考え方が、ほぼ平行線で進みながらも、結論や、深く、(たぶん多くの人にとっては)新しい考え方にたどり着いています。


例えば、「学校で言われることってつまんないよね」という話から始まって、学校で「これが大事」と言われることについて「学校的価値観」とネーミングし、

・「学校的価値観」に染まるとどれだけ人生の幸せに弊害があるか
・「学校的価値観」とどのように対峙していくか
・「学校的価値観」ではないどんな価値観があると、どう人を幸せにするのか

まで議論が深まっています。



「人が幸せになるのに納得感があることって大事だな」という話から始まって、

・若くして才能を開花させた人は一見幸せそうに見えるが、「好き」だけで(納得感ナシに)その道を進み続けるのは「解けない呪い」がかかったようなもの
・「人生において回り道が失敗ではない」のは、回り道が納得感を得るのにつながるから
・納得してお金を寄付をするのと、納得とは別の要因でお金を寄付をするのとでは、自分が「お金に対する本当の考え方」を知れるか否かという点で異なる。

と議論が深まって行きます。




主な議論のテーマは「学校教育」と「人生を幸せにする」だと思いますが、とくに議論が深い論点は「悩みどころ」と「逃げどころ」だと思います。

両者の意見の相違がはっきりしている点も「悩みどころ」と「逃げどころ」の2カ所であり、ここはそれぞれの過去の経験や、それぞれよく考え抜かれた説をぶつけあっているところから始まっているのも、議論が深くなっている要因だと思います。



全体の中では、比較的ちきりん氏が梅原氏に質問したり、掘り下げたりしているほうが、梅原氏が質問しているよりも多いように感じますが、このちきりん氏の質問が、議論を深める上で非常に上手に働いているように感じます。



また、よくある対談本では議論が深まりそうなところで司会の人が話を遮ってしまったり(そのような編集になっていたり)、司会の人がむりやり想定した話題や回答になるように質問を降っていたりしているせいで深くならない、という本もあります。

その点、この本は司会が存在せず、ある程度ものごとを深く考え、深く考えたことを言葉にする能力の高い2人が、話を進めながら考え、言葉にしている点で、短くて読みやすい本なのに、身近な導入からはじまって、深い議論と結論まで持って行けているように感じました。

「学校」と「人生」について、「悩みどころ」と「逃げどころ」という切り口で考えたい方へ、ぜひオススメです。

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